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【ネタバレあり】『シン・エヴァンゲリオン劇場版』感想メモはてなブックマーク

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を観てきたので、感想をメモ形式で列記しました。


以下は『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』のネタバレを含んでおりますので、映画をまだ見ていない方はご覧にならない方がよろしいかと思います。










  1. 面白かった。自分は満足。成仏した。

  2. ポスターに「さらば、全てのエヴァンゲリオン」とあった通り、テレビ版、旧劇場版、新劇場版、その他関連作品のすべて(全メタバース)を包含して精算しようとしていた。今思うと映画のタイトルについても、『序』『破』『Q』は「ヱヴァンゲリヲン」表記で『シン・エヴァ』は「エヴァンゲリオン」表記なのも、「テレビ版や旧劇場版を含めて畳みますよ」という表明だと捉えても面白いかも。その試みは成功したように思う(いや、単に権利処理の関係でしょうけど)。ただ、メタバースを畳もうとするあまり、新劇場版のみを鑑賞してきた人たちを置いてきぼりにしたかもしれない。

  3. これまであまり説明してこなかった事柄を、めっちゃ台詞で説明していた。ゲンドウがめっちゃ喋るとか。確かに「想定問答集」感はあった。これを「不自然だし、キャラが崩壊していて嫌」と思う人もいそうだけれど、自分は「ああー、庵野総監督がんばって物語を畳もうとしてるなあ」と好意的に感じた。

  4. 2021.03.21追記:マリが載るエヴァ8号機のパリでの戦闘シーンがコマ落ちしているように見えた。アニメのフレームレート以上に動きがダイナミックだったとかかな?

  5. 2021.03.21追記:エヴァmark4444C(陽電子砲装備のやつ)とエヴァmark44B(電力を供給するやつ)がパリ戦で出てきたので、「なるほどフランスだけにフレンチカンカンするエヴァかー」とグッときた。造形もかっこよかった。

  6. 前半の第三村パートは、アヤナミレイ(仮称)の「これが〇〇…」という呟きに気恥ずかしさを覚えたものの、全体的にはほっこりと楽しめた。ただ、ニアサードインパクト以後のそこそこ切り詰めた生活(第三村パートの「ノルマ」という単語や、シンジに出された食事の量から推測)の中で、シンジや(プラグスーツ姿の)アヤナミレイ(仮称)というヨソ者をあんなに自然に受け入れられるもんなのかなあという気持ちは生じた。まあ、村はKREDIT経由でヴィレから多数の支援を受けて成立していたのだから、ミサトが「ヴィレ関係者なので客人としてもてなすように」と言い含めるなりすれば、ああいうように接してもらうことも可能な気はする。トゥルーマン・ショー的ではあるけども。

  7. 第三村パート自体は、農業礼賛や原始社会礼賛というよりも、「汗水垂らすって悪くないぜ(地に足をつけて、平凡な日々を一生懸命に過ごすって悪くないぜ)」ということなんじゃないかなあ。ラストシーンでシンジが就職してそうなのも、そういう意図じゃないかなと思う。

  8. アヤナミレイ(仮称)の「〇〇って何?」への委員長の返す際にちょっと迷って「おまじない」と返すところが、幼児の質問に答える親の逡巡の感じが醸し出されていて、絶賛育児中の自分は「わかるー!」ってなった。

  9. トウジと委員長の子どもとか、ミサトと加持の子どもとか、子猫を育てる親猫とか、温泉ペンギンの群れとかによって、子どもを生み育てることの素晴らしさがことさら強調されていると感じて違和感を覚える方もいたみたいだけれど、加持がヴンダーを種子の箱舟にしたことからも分かるとおり、これらは「(自分の子どもに限らず)次の世代に生命や文化を繋いでいくこと」という、より広範な意図で提示されているものではないかと思う。親子については、エヴァはそもそもゲンドウという謂わば「毒親」とそれに翻弄されるシンジについて描いている作品なので、親子の素晴らしさをことさら強調しているわけではないと自分は思う。

  10. トウジの「他人に言えないようなこともした」というのは具体的にはどんなことなんだろう。村の掟に従わない者を袋叩きにしたとかかな。(労働ノルマを拒否した者など)

  11. アヤナミレイ(仮称)が図書館で手渡されたのは『オチビサン』だったので、「おお、絵本の中の登場人物から名前を考案するのか」と思ってしまったが、違った。庵野総監督と奥様の仲の良さが伺えて、楽しい仕込みだったと思う。

  12. 2021.03.21追記:アスカがシンジにレーション食わせるところの作画すごい。めっちゃ滑らかに動いてた。

  13. 加持リョウジ(Jr.)について。自分も子どもが生まれたときは名付けに苦労したので、ミサトが加持と同じ名前を息子つけたっていうのはどういう想いが込められているのかは気になった。加持のように生きてほしいってことなのかな。でもスパイだしなあ。やっぱり加持がサードインパクトを身を挺して止めたということがミサトの中での加持の評価を決着させたのかな。

  14. アスカがケンスケに惹かれた理由は明確には描写されていなかった気がするけれど、何なんだろう(着ぐるみのくだりは心理描写だし)。今回シンジにしたように、あまり人の心に踏み込まずに適度な距離を持って接してくれるところだろうか。

  15. シンジの「どうしてみんな優しいんだよ!」という台詞は素晴らしかった。旧劇場版の「どうしてみんな優しくしてくれないんだ」という絶望と対照的。まあ、実際『シン・エヴァ』の皆は他作品の人たちよりシンジに優しい。立ち直るまで待ってくれるし。

  16. 黒き月が富士山を引き摺ってるシーンで思わず笑った。

  17. ヴンダーは、まず、破とQの間の14年間のどこかで、加持がネルフのFour Horsemenのうちの1隻を強奪して、全生命の遺伝子を保存する「ノアの箱舟」にしようとした。ところが、加持の死後にミサトが対ネルフの戦闘艦にしたという流れなのかな。遺伝子カプセルはヴンダーが南極に行く前にパージしちゃったので、「おいおい、世界がまだ汚染されている状況でカプセルを発射しちゃったら加持の遺志はどうなるの…」と思ったけど、南極で決着をつけた後に地球に落下していたので結果的には問題なかったのか
    2021.03.21追記:僕が地球に落下した遺伝子カプセルだだと思ったものは、脱出カプセルであり、遺伝子カプセルは南極上空に放出されたままなのではないかというご指摘をいただきました。なるほど。大気から受ける抵抗力でいずれ落下するだろうっていう見込みなのかな。

  18. Horsemenについての「確か4番艦があったはず」という台詞を聞いて、思わず「敵戦力の分析せずにノコノコ南極行ったんかいーい!」とツッコんでしまいそうになった。面白かったからよし。

  19. ヴィレのクルーは大人数でようやくヴンダー1隻を操船してるのに、冬月は1人で3隻も操船しててスゲーと思った。マギ級のコンピュータの補助とかがあるのかもしれない。佇まいは『ナディア』のガーゴイルっぽかった。

  20. ミサトの動機が「父である葛城博士の敵を討つ」というのと「チルドレンの庇護者としての責任」というのに加えて、「そもそも人類補完計画が葛城博士の発案であるため、子である自分がケジメをつける」というのが加わってより強固になったのはよかったように思う。

  21. ゲンドウが頭部を撃たれた後に脳漿をかき集めて頭蓋に戻したの、ネブカドネザルの鍵でヒトならざる者になっていたゲンドウには本来不要な行動なんだろうけども、ヒトだったときの名残りでそういう行動をとったんだろうなあと思えて、興味深かった。

  22. ヴンダーからの総員退避時に脱出ポッドが船体表面をメリメリと破壊していく様子がエモかった。仕組み上はあそこまで固定されてるのはおかしいと思うけど、絵面がエモいからよし。

  23. 「シンクロ率∞」は思わず笑った。

  24. 2021.03.21追記:「マイナス宇宙」っていう響きに昭和っぽさを感じた。映画を見終わったあとで調べたところ、ウルトラマンエースの第13話に「マイナス宇宙」という単語が登場するらしく、これに由来するっぽい。十字架や「ゴルゴダ星」というのも出てくるらしい。そういえば、ファミコンの『ウルトラマン倶楽部』かなんかで見たことがあるような気がしてきた。

  25. マイナス宇宙でゲンドウが載った13号機が量子テレポートで移動するのは、ちょっと滑稽に思えたけど、ゼットンをオマージュしているのかなと思った。

  26. 巨大綾波や首なし綾波の「旧世代CG感」の不気味さは、違和感を覚えさせるための意図的なものなのだろうけど、個人的にはかなり気になってしまった。

  27. 初号機が13号機にふっ飛ばされてホリゾント幕によりかかって幕に皺ができるシーンは凄くよかった。東宝の砧撮影所かな。

  28. マリの「どこにいても見つけ出してみせるからねワンコ君」という台詞を聞いた直後は「唐突じゃね?マリはそんなにシンジに思い入れあるっけ?」と思ったけど、その後の冬月研究室の写真から、冬月研究室出身であるマリのクローン元のオリジナルは、ゲンドウと同じくユイに執着していて、その想いを託されたクローン先のマリも、シンジにユイの面影を見出して執着しているのかなと思った。(マリがクローンであるという説明は作中ではないけれど、綾波と式波がシリーズ化されたクローンであるならば、真希波もクローンだろうと推測)

  29. マリとゲンドウと冬月を虜にするユイ、サークルクラッシャーみある。最終的にマイナス宇宙でシンジが「エヴァのない世界」を創るために初号機にヴィレの槍(ガイウスの槍)を刺そうとしていたところで、それを代わりに引き受けた(?)のもユイなので、エヴァってすべてユイのてのひらの上の話なのでは…。

  30. ヴィレの槍を刺した後の浜辺。徐々に色がなくなっていって「動画」になり、さらには動きもなくなり「原画」になるのは、「エヴァのない世界」という願いの成就と一緒にシンジという存在も徐々になくなっていくという表現なのかな。『まどか☆マギカ』で、まどかの願いの成就とともにまどかの存在が消えたように。その後、マリが助けに来たら再度色がつくのは、マリがシンジを認識したことにより、シンジの存在が安定したということなのかも。科学における「観測者効果」みたいな雰囲気の話(観測者効果をよく理解してないけども)。

  31. 加持がカヲルを「渚司令」と呼んだのが一瞬気になったけど、カヲルがゼーレの司令だったとかじゃないかと思う。カヲルは「ゼーレの少年」であり、加持はゼーレのスパイだったわけだから。また、『破』から『Q』の間の14年の間に、ゲンドウと冬月は山に登ったりして不在だったわけだけれども、その間にネルフの司令も兼ねていたのかもしれない。

  32. マリがシンジのDSSチョーカーを外すシーンは、実際にシンジがチョーカーをつけていて、マリがそれを解除したというのではなく、シンジの肩の荷が降りたということをチョーカー解除に表現させた感じなんだろうなあと思う。

  33. 最後のシーンで宇部新川駅にいた大人シンジは「円環の物語」から脱した後なわけだけれども、このシンジは『シン・エヴァ』でマイナス宇宙から脱出したシンジが成長したものなのだろうか。そうではなく、新しく創造されたneon genesisの世界線のシンジなんだろうか。『シン・エヴァ』時の記憶があるか否かによって、マリと結ばれた意味が変わってくるように思う。マリに『シン・エヴァ』時の記憶があるかも気になる。前述の通り、マリがシンジに惹かれる理由はあったとしても、『シン・エヴァ』のシンジが『シン・エヴァ』のマリに惹かれる理由はあんまりない気がするんだよなあ。存在が消えそうになったところを助けてもらった恩はあるけども。向かいのホームにカヲルと綾波がいたことを考えると「シン・エヴァ」のシンジとマリではなく、neon genesisのシンジとマリであり、『序』『破』『Q』『シン』とは異なる形で出会い、惹かれ合ったんだろうなあと思う。声も別人(神木隆之介氏)だし。

  34. 退場したはずの人物がふわっと通りすがるというのは『ワッハマン』のエピローグも思い出す。

  35. シンジが宇部新川駅に居たということは、シンジの就職先は宇部興産なんだろうか。セメントは工業的な印象がある。前半の農業パートと対になっているのかもしれない。

  36. ラストシーンが実写にアニメのキャラを重ねるという手法で描写されたのは、旧劇場版で客席を写したときの「アニメに浸りっぱなしにならずに現実に戻れ」というメッセージとは違って、「アニメと現実は意外と地続きだから、アニメから活力を貰いつつ現実も生きて、その間を行き来すればいい」というメッセージに思えた。




自分も子どもが生まれたばかりなので、色々なところに感情移入して見てしまったなあ。新生児はエモい。

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