(新型コロナ)有効な消毒液と使い方は? 手指にはエタノール、丁寧な手洗いだけでも=訂正・おわびあり

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 エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、界面活性剤――。新型コロナウイルスの感染予防のため、消毒・除菌に様々な物質が使われている。効果が認められた成分や用途はどのようなものなのか。

 国民生活センターによると、現在販売されている消毒・除菌商品の成分は▼エタノール▼次亜塩素酸ナトリウム▼界面活性剤▽次亜塩素酸水▽二酸化塩素などが中心だという。

 このうち、11日時点で厚生労働省経済産業省新型コロナに効果があると認めているものは最初の三つ(界面活性剤は7種)だ。

 厚労省などによれば、手指の消毒にはエタノールが有効だ。濃度は70%が一般的だが「入手が困難な場合には60%台でもさしつかえない」としている。ただ、丁寧な手洗いだけでも十分にウイルスを除去でき、さらにアルコール消毒液を使う必要はないという。

 次亜塩素酸ナトリウムは「ハイター」「ブリーチ」などの商品名で売られている塩素系漂白剤の成分だ。物体の表面の消毒に有効で、濃度0・05%に薄め、布などにしみこませて拭く。原液の濃度は商品によって異なるので、薄め方は表示を参考にする。

 界面活性剤の7種は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が5月、テーブルやドアノブなど物品消毒への有効性を認めた。住宅・家具用洗剤や、食器洗いに使う台所用洗剤に含まれる。台所用洗剤(食洗機用を除く)を使う場合は、有効な界面活性剤が含まれているか確かめ、推奨された手順=図=でふき取るとよい。

 スプレータイプの住宅・家具用洗剤は、表示された使用法に従って物に吹きつけて使えば効果はあるという。しかし、元々スプレー使用を想定していない洗剤などをスプレー容器で使うのは、安全性が確認されておらず控えるべきだという。また、布や衣類への効果は、実施済みの試験では対象としておらず、わかっていない。

 一方、消毒液を空間に噴霧して「空間除菌」を図る動きも広がった。次亜塩素酸水を噴霧器に入れて使う自治体や企業が続出した。

 だが、厚労省は「どんな種類の消毒液であっても空間の除染には不十分なため、推奨しない」としている。噴霧によって空間に漂うウイルスを取り除く方法は確立されていないためだ。噴霧した有効成分が空気中のウイルスと出合う可能性は極めて低いという。

 国の見解を受けて噴霧の取りやめが相次ぎ、文部科学省も子どもがいる空間で次亜塩素酸水を噴霧しないよう通知を出した。

 ■次亜塩素酸水は調査中

 空間噴霧が問題となった次亜塩素酸水。物品の消毒で新型コロナに有効かどうかは、NITEが現在調査中で、国は11日時点で結論を出していない。

 次亜塩素酸水は食品加工や医療の現場で、食材や医療機器の消毒に以前からよく使われてきた。微生物への殺菌効果や安全性が認められ、2002年には食品添加物にも指定された。

 新型コロナへの効果以前に、空間噴霧に疑問が呈されている理由の一つは、殺菌効果が認められた使い方が「かけ流し」だからだ。食品添加物指定の際の議論でも、濃度や材質などの規格を満たした装置で作った次亜塩素酸水を、その場で食材にかけ流ししながら使うのを前提としている。次亜塩素酸水は汚れなどの有機物と反応して分解しやすく、すぐに効果が失われる性質があるためだという。

 生成装置を製造する森永乳業によると、例えばカット野菜の殺菌なら、まず水道水で野菜の汚れを落とし、有機物を取り除いてから、常に新しく生成された次亜塩素酸水を5~10分程度かけ流しし続ける、という使い方を推奨している。

 厚労省の使用基準には「最終食品の完成前に除去しなければならない」という項目もある。厚労省は「マウスやラットに投与した実験で健康に影響があったというデータはなかったが、人体への摂取はそもそも想定していないため、基準を設けた」と説明する。

 一方、噴霧の安全面については、一部のメーカーや研究機関が、マウスやラットに一定期間吸入させても問題なかったなどとする試験結果を出しており、噴霧器も長年使用してきたと主張している。

 ただ、厚労省は「厚労省として安全面の精査をするには、医薬品としての申請が必要。現段階では判断できない」との立場だ。

 また、コロナ禍を受けて容器入りで流通している商品が増える中、表示があいまいで、成分や濃度がはっきりしないものが多いことも問題を広げている。

 次亜塩素酸水には、専用装置で生成するもののほかに、次亜塩素酸ナトリウムと塩酸などを混ぜて作るタイプもある。だが経産省によると、製法や原料が明記されていない商品が多いという。また、紫外線や有機物で分解しやすい性質があるにもかかわらず、保存方法や使用可能期間の表示がないものもあるという。

 次亜塩素酸水など、電気分解で生成した水の研究者らでつくる一般財団法人「機能水研究振興財団」によると「特に次亜塩素酸ナトリウムを混ぜて作るタイプについては濃度などの規格がなく、実態が分からない。噴霧は危険」という。こうしたタイプについては厚労省も「吸引すると有害」としている。

 国民生活センターは「使用に際しては表示をよく確認し、不明な部分は事業者に確認を」と呼びかけている。小林未来

 ■Q&A 国のトップが感染、代行はどう決まる? 日本は優先順位をつけて5人を指名 京大法学部教授・待鳥聡史さん

 Q 英国では4月、新型コロナウイルスに感染したジョンソン首相が集中治療室に入り、外相が一時職務を代行しました。各国で同様の事態が起きたら、どうなるのでしょうか。

 A 英国では、緊急時にどの役職の人を臨時の首相にするのか法律上の規定はありません。今回、ラーブ外相が指名されたのは、筆頭国務大臣でもあり、ジョンソン首相との関係も近かったためと考えられます。

 英国の憲法は単一の法典の形をとらず、マグナ・カルタ(大憲章)や歴史的慣行など様々な組み合わせで政府や内閣、首相の地位や権限が定まっています。その点では日本と比べ、あいまいさがあります。

 日本は組閣の際、内閣法9条に基づき「臨時代理予定者」を割り当てることになっています。優先順位をつけて5人を指名する形で、現安倍内閣では(1)麻生太郎副総理兼財務相、(2)菅義偉官房長官、(3)茂木敏充外相、(4)高市早苗総務相、(5)河野太郎防衛相の順。仮に安倍晋三首相が病気などで政権運営ができなくなれば、麻生副総理が臨時代理を務めることになります。

 米国は大統領制ですが、合衆国憲法修正25条に規定があります。大統領死亡などの場合は副大統領が大統領に昇格、一時的な職務不能の場合は副大統領が大統領代理になります。韓国では国務総理が、フランスでは上院議長が代行すると憲法に規定があり、制度は各国それぞれです。

 首相や大統領の代理の権限は、明確でない場合が多いですが、代理はあくまでも政治的空白を生まないための短期的穴埋めで、大きな権限を行使することは想定されていません。(聞き手・植松佳香)

    *

 まちどり・さとし 京大法学部教授。専門は比較政治。特に現代の米国や日本の政治について、仕組みやルールの効果を中心に分析している。

 ◇今週は海外とつながりのある話題です。日々のニュースの理解をさらに一歩深められるようなテーマを取り上げました。

 ◇新型コロナウイルスに関する問題に、記者が専門家に取材してお答えします。ご質問はQcorona@asahi.comメールするにメールでお寄せください。

 ■くらしの相談窓口

 【厚生労働省フリーダイヤル】

 感染症・健康相談(0120・565653)午前9時~午後9時

 【消費者トラブル相談】

 消費者ホットライン(電話188)午前10時~午後6時▽各地の消費生活センターまたは国民生活センターにつながる

 【国の給付金に関する不審電話などのトラブル相談】

 新型コロナウイルス給付金関連消費者ホットライン(0120・213・188)午前10時~午後4時▽国民生活センターが設ける専用相談窓口。午後4~6時は同センター(03・3446・1623)で受け付ける

 【日本司法書士会連合会「生活困りごと相談」】

 電話(0120・315199、平日午前11時~午後5時)もしくはウェブ面談(平日午後2~5時)で司法書士が無料相談に応じる。ウェブ面談はメール(sodan@nisshiren.jpメールする)で事前予約が必要。前日午後4時までに氏名と希望日時を送り、確定の返信が届けば予約が完了する。当日に面談で使うURLがメールで送られてくる。1回約30分

 【日本弁護士連合会無料相談(一般向け)】

 電話(0570・073・567)かホームページ(HP)で6月19日まで予約を受け付ける。電話は平日午前11時~午後3時、HPは24時間可能。アドレスはhttps://www.nichibenren.or.jp/news/year/2020/topic2.html別ウインドウで開きます。近隣の弁護士が数日以内に折り返し連絡し、相談にのる。初回は原則無料

 【弁護士子どもLINE相談】

 二つのアカウントで虐待や学費の支払いなど子どもからの悩み相談を24時間受け付ける。保護者など周囲の大人も可。(1)弁護士子どもLINE相談@Tokyo2(ID「@154irgux」、金土除く午後5~7時返信)(2)コロナと人権多言語子ども相談(同「@185worbj」、土日除く午前10時~午後5時返信。日英韓中の4カ国語に対応)

 【内閣府のDV相談窓口】

 従来のDV相談ナビダイヤル(0570・0・55210)に加え、DV相談+(プラス)(0120・279・889)を新設し、24時間対応する。「DV相談+」のホームページ(https://soudanplus.jp/別ウインドウで開きます)の専用フォームからはチャット・メールによる相談にも応じる。チャットは正午~午後10時、メールは24時間対応。英語、中国語、韓国語スペイン語、ポルトガル語、タガログ語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語、ネパール語でのチャットにも対応する

 ■感染者の多い国・地域

 世界計 感染者 736万0239(+11万9160) 死者 41万6201(+4881)

    *

              感染者      死者

 米国      200万0464 11万2924

 ブラジル     77万2416  3万9680

 ロシア      49万3023    6350

 英国       29万1588  4万1213

 インド      27万6583    7745

 スペイン     24万2280  2万7136

 イタリア     23万5763  3万4114

 ペルー      20万8823    5903

 フランス     19万2068  2万9322

 ドイツ      18万6522    8752

 イラン      17万7938    8506

 トルコ      17万3036    4746

 チリ       14万8456    2475

 メキシコ     12万9184  1万5357

 パキスタン    11万3702    2255

 サウジアラビア  11万2288     819

 カナダ       9万8720    8038

 中国        8万4209    4638

 バングラデシュ   7万4865    1012

 カタール      7万3595      66

 その他     127万4716  5万5150

 (11日午後5時現在。米ジョンズ・ホプキンス大の集計から。カッコ内は前日比)

 <訂正して、おわびします>

 ▼4日付社会面の新型コロナウイルスの消毒液噴霧の有効性に関する記事と、12日付「新型コロナ」面「有効な消毒液と使い方は?」の記事で、いずれも機能水研究振興財団の説明として「次亜塩素酸水の生成装置メーカーなどでつくる」とあるのは「次亜塩素酸水など、電気分解で生成した水の研究者らでつくる」の誤りでした。メーカーは財団の運営主体ではなく、賛助会員でした。

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