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映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』:超絶な絵と音で描く庵野監督の”現代神話”完結編。

 こんにちは!
 お元気ですか?

 『シン・エヴァ』を観てきました!
 私にとっては2021年の劇場鑑賞1作目。
 いや正直TV版も旧劇も新劇も全く理解できてない人間ですけど、国民的御祭に乗じようという魂胆です(笑)

 「よく分からないだろうけど楽しむ!」と観てたので、理解できたかどうかは別にして、とても楽しく面白かったです! この記事も考察とかではなく、あくまで感想です。
 新劇場版の3作品を見ればこの『シン・エヴァ』を劇場で楽しめるので、ぜひ! これは絶対に映画館で観るべき映画です!


2021年3月8日鑑賞

シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇
EVANGELION:3.0+1.0
THRICE UPON A TIME

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』画像
©カラー/EVA製作委員会

映画の評価
評価

5.0 / 5.0

一言コメント
  • TV版から26年、新劇『:序』から14年、『:Q』から9年の時を経た『エヴァンゲリオン』の完結最終幕。
  • アニメーションも背景美術も劇伴も演技も音響も効果も物語も、作品を構成する”全て”が他の追随を許さない最高の仕上がりで大興奮!
  • 多くの物語を背負ってきたキャラクターの活(生)かし方が見事で素晴らしかった。
  • 『エヴァ』の展開と帰結は…難しいけど凄かった!(ネタバレ回避のため賛否はノーコメント)

あらすじ

エヴァがついに完結する。
…[中略]…
人の本質とは何か? 人は何のために生きるのか? エヴァのテーマは、いつの時代にも通じる普遍的な核を持っている。
シンジ、レイ、アスカ、マリ、個性にあふれたキャラクターたちが、人造人間エヴァンゲリオンに搭乗し、それぞれの生き方を模索する。
人と世界の再生を視野に入れた壮大な世界観と細部まで作り込まれた緻密な設定、デジタル技術を駆使した最新映像が次々と登場し、美しいデザインと色彩、情感あふれる表現が心に刺さる。
…[中略]…
庵野総監督がアニメーションのフィールドで創作の原点に立ち返り、新たな構想と心境によって2012年の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』以後、封印されてきた物語の続きを語る。…[中略]…1995年にTVシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』で…[中略]…社会現象を起こした初出から、実に25年――その間、常にエポックメイキングであり続けたエヴァの、新たな姿を見届けよう。
映画公式サイト

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』本予告

総監督:庵野秀明
監督:鶴巻和哉, 中山勝一, 前田真宏
脚本:庵野秀明
制作:スタジオカラー
音楽:鷺巣詩郎
キャスト:緒方恵美, 林原めぐみ, 宮村優子, 坂本真綾, 石田彰 and more.
上映時間:155分
日本公開:2021年3月8日
配給:東宝・東映・カラー

感想あらまし

 『シン・エヴァ』を観ました!
 TVシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』から26年、新劇場版『序』から14年、『新劇Q』終了から9年の時を経ての最終幕でした。

 国民的な祭典ですよ。チケット予約時から各社サバ落ち、ものの数分で座席は売り切れ。当日もパンフ&物販は行列で、こんなにも大盛況な映画館を久々に目にしました。

 いや~凄かった!
 これ以上ないくらいあまりにも『エヴァ』だったし、再びまた『エヴァ』の世界観を観ることができる嬉しさが込み上げてきました。
 そして、これが「現代の神話の完結か」と茫然自失ですよ……。

【公式】『これまでのヱヴァンゲリヲン新劇場版』【庵野秀明編集】




 正直、TV版も旧劇も新劇も分かってない私なので『シン・エヴァ』だって理解出来るはずもなく。でも超面白かったし、どっぷりと浸れたので最高でした!
 以降、ネタバレ無しでうす~い表面的な感想だけちょろっと書き記しておきます。

 簡単なあらすじです。




 なんか「劇場アニメ映画」を構築する全てが凄かったです。
 他の追随を許さない一級品。最高峰。極上。
 劇場版アニメーション映画としてこんなにも素晴らしい表現が出来るのかと深い感動と興奮を覚えました。

 震える程格好良い劇伴、超絶に美麗な背景、感動に溜息つくデザインと画面構成、瞬きすら惜しい史上最高峰のアニメーション、迫真の声優の演技、どこまでも深く広く壮大な物語。

 これは絶対に映画館で見るべき。
 いやもう本当に見事で、どっぷりと浸かりました…。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』画像
©カラー/EVA製作委員会




 とにかく完成度が高い。
 「ファン待望」って感じの完結作です。

 よく分からない単語が飛び交ったり、戦闘時の確固とした指揮系統を描写したり、機械を起動したり出撃したりする時の点呼や館内放送や無線の音声とか、規模がバカでかい機体が動いたり、クールなガジェットが登場したり。
 もう、とにかく男心を掴みまくる!

 それに、キャラクターの描き方とか活かし方とかも、他のどの作品も真似できないくらい生き生きとありありとまじまじと描いていて。特に個々のキャラへの思い入れが強くなる『エヴァ』では大切なところです。



 物語の展開と帰結。
 恐らく私は表層部分しか理解できていないでしょうけど、それでも凄かったです。

 これはネタバレになるので、止めておきます。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』画像
©カラー/EVA製作委員会

映画の感想

スクリーンに映る映像が至高すぎた…


 映像が神すぎですよ。
 劇場のスクリーンに映る映像が全てどのシーンを切り取っても綺麗で美しくて滑らかで激しくて最高でした…。

 あんなにも計算されて考え抜かれて作り上げられているであろう映像を、映画館の大スクリーンで観ることが出来て本当に嬉しかったです。いや本当に感動しました。



 まず何よりも「映る光景」が綺麗。

 『Q』のニアサードインパクトで破壊された都市や真っ赤に染まった山と街、廃棄されたエヴァシリーズ、そして『エヴァ』の代名詞とも呼べるべき「電線・鉄塔」の存在があり、巨大な建造物やメカ類の中で小さな人間が動いている様子とか。錆びた標識や荒廃したビルやNERV本部とか。

 「コレがエヴァの世界」っていう安堵感みたいなのも覚えるし、現実にはありえない状況なのに生活感や時間の経過が感じられるからから、それが妙にリアルで、美しいと思えるんですよね。
 しかも、背景美術が美麗すぎて、もはや写真のようなシーンもあったりして、どにかく凄すぎます…!!!

 普通のアニメなら「単なる背景」と一蹴することもできますけど、この『シン・エヴァ』は目に映る景色の全部が本当に洗練されていて、どのカットでも全部ポストカードで欲しいくらい。




 そして、デザインが凄い!
 もうね、完全に心を鷲掴みされましたよ。「格好良い」って形容詞は『エヴァ』のためにある言葉。

 もともと『エヴァ』のデザインって細部までヤバいじゃないですか。
 決戦兵器エヴァンゲリオンや使徒の外観はめっちゃ燃えるし、第3新東京など都市の様子も機能面でもデザインが行き届いているし。NERV本部の長いエレベーターとか隔離壁の設計とか。あるいは『Q』の戦艦ヴンダーやロンギヌスの槍など人工物とも生物ともとれるデザインとか。もしくは覚醒したエヴァやガフの扉やサードインパクトの様子とか。機械のディスプレイの表示内容とかボタン類とかの些細なところも。
 この点は『シン・エヴァ』でも健在で、スクリーンに映し出される度に興奮で、心の中で拍手をしていました。

 多分、色とかもですよね。
 赤く染まった世界とかプラグスーツとか武器やビームとか、NERVやWilleの装備品とか、私服とか爆発とか、『エヴァ』の世界観を映像造っているものに色彩に大きな役割もあるのだと思います。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』画像
©カラー/EVA製作委員会




 それに、画面の構図が刺さりまくり。
 登場人物の立ち位置とかありえないくらい絵画的で泣きそう(本当はキャラ名とか言いたいけど我慢)。その上、先に書いた非常な背景の前で生きたり話したりするキャラクター達の構図とか、戦うエヴァなどの高度とか身体の使い方とか。
 私なんかは「その構図が何を意味するか」とか一切分からないですけど、目で見て綺麗なんですよね。特に映画の横長のシネマスコープサイズな映像で画面幅を目いっぱいに使っているからなお最高です。また実写と違って余計なものが写り込まず、描きたい要素が詰まっているというのも興奮を熱くした所以かもです。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』画像
©カラー/EVA製作委員会




 もちろんアニメーションは一級品!
 久々にこのクオリティを観ましたよ。いつ以来でしょうか、2020年に観た『Fate/sn HF 3』に負けず劣らず。いや、感覚的には『シン・エヴァ』の方が上かも?
 とにかく凄かった!

 やっぱり目を引くのは爆発とか水の動きとか煙とか飛翔体とか、流体系の動きです。あの爆発とかを観ただけで「『エヴァ』だな」と思えるし、クオリティも圧倒的だと思います。もちろんキャラクターの動きとか表情とかも丁寧で素晴らしかったです。

 それに、こんなにもCGアニメーションとの相性は良いアニメもないですよね。
 エヴァ機体や兵器や装備や敵の様態もそうだし、使徒とか槍とかのキーアイテムもだし、CGそのもののクオリティも高い上に、作品とマッチしているから凄い!

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』画像
©カラー/EVA製作委員会

劇場音響で聴く音が素晴らしすぎた…


 音がもう『エヴァ』なんですよね。
 もう素晴らしいですね。これが映画館の大音響で聴くことが出来るってそれだけで感動モノだし、実際に鳥肌でしたよ…。



 とにかく劇伴が神。
 TV版でも旧劇でも新劇場版でも、鷺巣詩郎さんの楽曲は本当に素晴らしい!
 例えばパッと思い出す「ヤシマ作戦のテーマ音楽」のような、戦闘シーンでの高揚感と緊張感を高める音楽は耳にしただけで大興奮! 壮大で荘厳な賛美歌的な劇伴もそうだし、日常パートの軽快なBGMもそうだし、どこを聞いてもすごい。サントラが欲しい!

「Shiro SAGISU Music from “SHIN EVANGELION”」CMSPOT




 それから、声優さんの演技が神業ですね。

 二十数年の時を経ても同じ声を演じるというのも凄いし、中でも「叫ぶシーン」の声がヤバいですね…。真に迫るというか揺れる感情の脆い感じというか。他のアニメでは見れない泥臭い感じとか、本当に凄い。

 過去作も含めて、例えば緒方恵美さんのシンジくんとか叫ぶ声は圧巻だし、林原めぐみさんのレイは短い言葉の中に微妙な意味を込めていたり。
 こういうのって本当に声優さんの技量に驚かされるし、映画館のクリアな音響で聴くとより一層そう思います。



 あとあと、宇多田ヒカルさんの主題歌もよかった!
 あの綺麗な歌声を聴きながらエンドロールを眺められる至福の時間が味わえるのは、映画館の特権ですね。

宇多田ヒカル『One Last Kiss』

男心鷲掴み、ファン待望の「これぞエヴァ!!」

 そもそも「完結作」というだけでファン待望ですよね。
 なにせ、TVシリーズで一度完結し、それを作り直した旧劇でも完結をしていて、その上で再始動した新劇場版シリーズがいよいよ完結なんですから。

 なお、この『シン・エヴァンゲリオン』がハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、そもそも完結するのかしないのか、納得できるか受け入れ難いか……等々についてはノーコメントです。
 このブログの感想は、作品の帰結や物語の着地点そのものへの感想とか評価とかは排しているつもりです。



 いやしかし、ファン大歓喜じゃないですか?
 「これぞエヴァだ!!」と声を大にして叫びたい。
 楽しんだし、理解できてきないとしても最高に面白かったし、何よりも王道と外連味の両方を合わせたような物語に壮大な世界観に細部の台詞回しに…と要素が全部《エヴァ》だからとても素晴らしい!

 よく分からない単語───装備品とか作戦とかコードとか機体名とか地名とか識別子とかシナリオとか計画とか───が半ば鑑賞者を置いてけぼりにする感じで(理解してる人には分かるのだろうけど)次々と畳み掛ける感じとか最高。
 それに、Willeのヴンダーを操縦する際に搭乗員らの喚呼や葛城艦長の指示など、作戦における指揮系統や操縦の描写がいちいち細かい! どんな装置をどう準備しているのかなんとなくしか分からないけど、男の子はこういうのに憧れる! これもエヴァの醍醐味ですよ。
 もちろん、伊吹マヤさん以下Wille隊員たちが操作しているパソコンに表示されるデータ類とかヴンダー操舵室の機器類とか様々なガジェットが細部まで作り込まれているのも最高ですよね!

 あとは、小さな人間同士のやり取りが描かれたかと思えば、ビルほどの高さのエヴァが戦ったり、もっと巨大な戦艦が宙に浮いたり…スケール感のメリハリがおかしくなるような落差が大きいのもエヴァですよね!



 やっぱり、劇場でエヴァを観る興奮ったらないですわ!

キャラクターの描写が見事

 キャラクターの描写が見事でした。
 もちろん過去作でもそうでしたよね、TVシリーズのシンジとか感情の起伏が激しくて鬱だったし、旧劇で戦う弐号機に乗ったアスカが凄かったし、新劇場版でのレイのポカポカした様子は可愛かったし。

 『エヴァ』作品ってキャラクターの描き方が本当に見事だと思います。
 もちろん、作品のテーマの一つに「人間の心」というものがあって、かつ「人類補完計画」なるものを描いてきた作品とすれば当然なのかもしてませんが。

 それは、完結作の『シン・エヴァ』でも。
 今まで積み重ねてきた物語があるし、例えば劇場公開ポスターに映っているシンジ・レイ・アスカ・マリ・カオルの子どもたちに限っても一言では言い表せない感情が色々と描かれて、「やっぱりエヴァは凄い」と思いました。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』画像
©カラー/EVA製作委員会




 あまり詳しく書くとネタバレになるので…。

 でも、色々な意味でキャラクターが生き生きとしていたし、彼ら彼女らが背負う物語と人生のあり方も深かったし、感情の変化や起伏の描写が丁寧で見事というほかありません。

完結作としての物語

 いや~凄かった。
 完結作としての物語、こうなるんだなって。
 色々と思うところはありますが、「良かった」とも「あんまり」とも言えないので、「凄かった」というくらいに留めておきます。

 正直、私は深く考察をしているわけではないし、恐らくシリーズを通しても本作に限っても表層部分の数割を理解できているかどうか程度ですが、それでも十二分に楽しめました。
 というか、「わけがが分からなくても楽しめる」というのが『エヴァ』の有り難いところですし、物語を補完する映像や音楽やキャラなどがあることで、とても見やすいのが助かっているところです。

 この最終的な着地については、ふむふむ、と。
 なるほどな、と。
 そうなるのか、と。



 ネタバレは書けないので。
 公開済みのキャッチコピーを載せておきます。

続、そして終。 非、そして反。

さらば、全てのエヴァンゲリオン。


注意


以降、映画本編のネタバレあり



ネタバレ感想

冒頭12分10秒10コマ

  ネタバレの忠告はしたので、どこから書いても良いんですけど、とりあえずは全世界同時公開&Amazon配信された「冒頭12分10秒10コマ」について書き始めるのが良いかな、と。

 ま単純に、事前に公開された映像と劇場本編との映像は基本的に同じものだということで安堵というか驚きというか。
 アメコミMARVEL映画とかは予告詐欺をよくやるし、『エヴァ』だって予告と実際が別物なことはあったし、「冒頭映像と本編が違う」ということを少し期待していたんですけどね…(笑)



 冒頭12分10秒10コマ。
 もうね、コア化して真っ赤に染まったパリの街を大画面で拝めただけでも大興奮でしたし、中でもエッフェル塔の美しい鉄骨が赤色でそびえ立つ姿とか最高でした。キービジュアルの光景ですね。やっぱ、エヴァは鉄骨と電線ですよ。

 【ユーロネルフ第一号封印柱復元オペ】
 作戦時間が720秒=12分ですから、作中内の時間と上映時間とがほぼ完全に同じものという形。だから、北上ミドリ隊員が残存秒数をカウントする声が格好良いし、マヤさんの「無理っていうな!」の緊迫感が凄かったです!



 マリさんの対エヴァ44A戦闘が最高!
 吊り下げられたピンクの8号機を操って飛翔する群体を機関銃で掃射し、銃口が駄目になったらすぐ次の戦闘態勢へ。この切替の速さはエヴァシリーズを通して好きなところです。

 さらに、陽電子砲を備えたエヴァ軍事転用版の敵が地平線から迫ってくるビジュアルとか最高じゃないですか。歩き方が妙にリアルで気味悪いのが好きです(笑)
 これでどうするかと思えば、陽電子砲を戦艦で留めて、リツコ博士の眼前でマリがバックアップ。そのまま8号機でエッフェル塔を抱えて突撃とか最高!



 この冒頭アバンのシーンは、BGMも素晴らしかったし、あとわかりやすかったですよね。なので『シン・エヴァ』の中でも好きなシーンです!

 あとあと、作業時間の残りが11秒くらいあったじゃないですか。
 よく爆弾解体のシーンとかは残り1秒とか0.1秒とかで止まる展開が多いので、11秒の残り秒数というのは妙にリアルで好印象でした。

キャラクターの行方

 『エヴァ』作品はキャラクターの感情や心情を描く描写が丁寧だし、とても説得力を持って感じられるんですよね。

 今回の『シン・エヴァ』では、やはり「第3村」でのやり取りがとても印象深かったです。



 『:Q』のラストからWilleの救援を求めて彷徨い歩いたアスカ・レイ・シンジの3人が相田ケンスケの助けを借りてKREDITの「第3村」へ到着し、レイは鈴原トウジの診療所で、アスカとシンジはケンスケに世話になります。

 村の皆んな、優しすぎます!
 同じことをシンジも言っていましたが、ニアサードインパクトを起こした原因であるシンジに対して、トウジもケンスケも委員長も優しくて、そりゃ居たたまれない気持ちにもなりますよ。



 まず、なんと言っても黒波レイ
 『:Q』ではおよそ感情というものを持たなかったクローンだったのに。第3村で生活する中でどんどん感情が芽生えてくる様子がとても尊かった…。
 中でも新しいものを観た時に「これ、何?」と聞くところ。挨拶の意味を聞いたり、猫を見て「これ何、犬と違う」とか、赤ん坊を見て「小さい人間」と言ったり、もう可愛すぎる!!!

 クローン人間が人々の優しさに触れて心を芽生えさせる…という系のストーリーは珍しいものではないですが、「綾波レイ」だという点が大きいですね。
 アスカが言ったように「綾波タイプはシンジを好くよう設計されている」としても、その感情を大事にしようとするレイの心がとても愛おしかったです。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』画像
©カラー/EVA製作委員会




 そして、碇シンジ。
 物語の主人公で、一番の問題児ですね。
 『Q:』で完全に精神状態がおかしくなってしまった、というか対人恐怖症というか、失語症というか、鬱状態というか、病んでしまったシンジ君。第3村に到着してもずっと黙って喋らず食事もとらず独りでいる彼。湖のNERV施設跡で外界を拒絶する少年。

 そんなシンジを立ち直らせる、前を向かせる展開が見事でした。
 正直、あそこまで落ち込んでいる少年をどう物語に引っ張り込むのか、『エヴァ』の落とし前を付けさせるのか、心配でなりませんでした。
 TVシリーズではその状態のまま補完計画が始動したし、旧劇では戦略自衛隊の襲撃でそれどころではなかったですし。

 そんな不安をよそに、アスカの強引な導きと、レイとの会話、ケンスケの心遣いなどを通して心が解けていく様子が丁寧に描かれていて、素晴らしいと思いました。段々と心を開いて、話すようになり、笑うようになり。自分の存在と過去と弱さに向き合って認めて前を向く心の変化がすごく自然で見事に描かれていたのが素晴らしかったと思います。



 キャラクター相関関係に大きな変化がありました。

 まず、綾波レイ=黒波の消滅。
 「名前をつけてほしい」と望んだ彼女が、命令なくても好きなことして良いと自我を感じ始めた彼女がついに最期を感じて、委員長に手紙を書いて、シンジに会って、LCLになるという…もう報われないヒロインだなぁ….と。

 そしてシンジ。
 最後、ヴンダーへと戻るところでアスカについていくと決断をした覚悟の表情と、自分の意思を表に出すところまで成長した、大人になったところが描かれて、これまた感動しました。

“落とし前”をつけるために

 ヴンダーへと戻ったシンジ。
 DSSチョーカーを装着しない代わりに、『アベンジャーズ』のロキが隔離されていたような個室に監禁状態にされるシンジ。

 「シンジを回収する意味があるのか」「NERVに戻られるよりまし」「船員に射殺許可が下りている」「シンジは十分償った」「家族を殺された」「彼がいなければ死者が増えてた」

 賛否様々な意見が出される中で北上ミドリの「清めれば良いと思ってる」という捨て台詞が響きます。そういう感情を持ちつつWilleに参加しているわけで、彼ら彼女らの「けじめ」も大切だと思います。
 シンジが故意に引き起こしたニアサーではないけど、ミサトさんが背中を押していたし、でも関わった人は色々と責を負っているのも知っているし…。



 式波・アスカ・ラングレーのけじめ。
 どのタイミングでかは忘れましたけど、彼女もまたクローンだったと判明しますよね。様々な考察記事で指摘されていたし、村での会話でその片鱗は見えていました。

 「あの頃はシンジが好きだった」
 そう過去形で話すアスカに対して、「僕も好きだった」と返せるシンジの関係がなんだかとても心に残ってよかったです。

 また、「なんで殴ろうとしたか?」という問いに対してもシンジが回答し、それに対して感情の起伏少なく「大人になったようね」と返せるアスカが本当に格好良い。「スッキリした」と清々しそうな、心のしこりが取れたような感じがして、良かったです。



 「けじめ」という意味では、組織そのものも。

 対NERV殲滅を目的とする「Wille」が、本来は加持リョウジの「地球の種を保存する」という現代の壮大なノアの方舟だったわけで、新劇場版で登場した「海洋研究機構」的な組織がWilleの前身だとする考察はその通りだったということですね。腕章の色でも「海の色」だと説明がありましたし。
 で、加持さんが『破』でのサードインパクトを止めて死亡したことで、ヴンダーを継いだミサトさんがNERV壊滅へと計画を進めているわけと。

 NERVという組織が長々とやってきた、あるいは碇司令の私的組織になったNERVのやることに対するけじめを付ける、という言い方が正しいのかしら。
 そのための【ヤマト作戦】が始まるわけですね。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』画像
©カラー/EVA製作委員会

エヴァンゲリオンの戦闘

 NERVの碇司令が動き出す後半。
 「黒き月」と共にセカンドインパクトの爆心地である南極に移動し、そこでフォースインパクトを引き起こそうと目論むNERV。なお碇ゲンドウの目的はアナザーインパクトの成就でしたけど。
 そのNERV本部を強襲してフォースインパクトを阻止し、建造中のエヴァ13号機の無力化を目的とした【ヤマト作戦】がミサトさんの命令により決定されます。

 ヤマト作戦。
 エヴァの「ヤシマ作戦」やゴジラの「ヤシオリ作戦」に続き、「ヤ」から始まる作戦名をよく考えるし、完結作でも観られて大興奮でした。それに鷺巣詩郎さんのBGMがやっぱり超格好良いですね!

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』画像
©カラー/EVA製作委員会




 ヴンダーでの襲撃に対して、邪魔をするのは冬月先生が操縦する戦闘艦ヴンダーが反撃。壮絶な戦いが繰り広げられる中で、アスカとマリが13号機破壊のため投入され、戦闘へ。

 襲いくるエヴァMark7の大群と戦う様子は格好良いし、とにかくマリの軽快な戦闘が見ていてスカッとするんですよね。ここも最高に興奮したシーンでした!

 13号機の破壊。
 ATフィールドに守られた13号機が簡単に破壊できないと悟ったアスカが、最終手段として自身のリミッターを解除。「使徒の力を使う」という究極の技で第9使徒の能力を使って13号機破壊を試みます。
 最終的に、やっぱりアスカってこういう運命なんだなって。眼帯を外して無効化装置みたいなのが飛び出して使徒化。いやはや…恐ろしいですね…。けど、アスカのそういうところ、ミッションの完遂を最優先させる心持ち、好きです。



 シンジが再び、エヴァに乗る。

 彼に否定的だったミドリが「乗るなら撃つ」と銃口を向ける中、鈴原サクラも同じく「怪我すれば乗らずに済む」と銃を構えます。そして発射された銃弾は、シンジを庇ったミサトさんが被弾。

 サクラさんの「皆んなを不幸にした。けど助けられた」という矛盾の気持ちというか、悲しみと感謝が混ざった複雑な感情がとても生々しく感じられました。
 逆に、ミサトさんの「シンジが乗らなければ全員死んでいた」というのは解釈の仕方次第というか甘えな気もしますけど、サクラやミドリの意見ってとても現実的で賛成できますと思います。



 で、シンジ君がエヴァ登場。
 シンクロ率0%のはずが、実際には「∞(無限)」であった。『:破』で「碇君がエヴァに乗らないですむように」と願った綾波レイがエントリープラグ内に残存していて、彼女から想いを受け取ってエヴァを起動するシンジ。

 ここで『:破』のレイとシンジの関係が繋がるって、もう感動以外の何者でもないですよ!

さらば、全てのエヴァンゲリオン。

 碇シンジと碇ゲンドウの対峙。
 エヴァ初号機と13号機に乗ってそれぞれ戦う中、明かされるゲンドウの計画。

 「生命の実」を得た使徒と、「知恵の実」を食べた人類。人類は「使徒に全滅させられるか知恵を放棄するか」の二択しか選択肢がないとされるシナリオ。そのような中、セカンドインパクトで「海の浄化」を、サードインパクトで「大地の浄化」を、フォースインパクトで「魂の浄化」を目指し、全ての人類の魂を結集することが目的であると。
 そして、最終的には「ユイに会いたい」というゲンドウの望み《アディショナルインパクト》に向けて、《ゴルゴダオブジェクト》を超え、マイナス宇宙に突入し、戦いながら問答を繰り返す内容。

 そして、ゲンドウ自身も孤独感に苛まれ、それを救ったユイを深く愛していることが語られました。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』画像
©カラー/EVA製作委員会




 しかし発生したフォースインパクト。
 巨大な綾波レイが誕生する中、ミサトは「ヴンダーの脊髄で《ガイウスの槍》を造る」ことを計画し、実行。自身を犠牲にして槍をシンジに届けます。

 アスカやカヲルやシンジや加持らの回想や過去を描きながら、「生命の書」に記されたカヲルが月面の棺から再生をして時間を繰り返したことが明かされました。

 そして、それぞれの回想と過去編を見送ったシンジは、【エヴァが存在しない世界】を実現するため、槍で全てのエヴァンゲリオンを破壊。最後に初号機に槍を突きた立てる時、母親であるユイが抱きしめながら「ずっとそこにいた」ということが描かれます。
 そして、現実世界に戻ったシンジらは、マリのエヴァも破壊。



 ラスト。
 駅のホームでイチャつくシンジとマリ。
 宇部新川駅の実写空撮でエンドロール。

終盤の感想

 上のような終盤の展開でした。
 ここらへんの物語や展開や設定や用語は全然分からないので何とも言えませんが…。

 全体的に「きちんと完結したな」というのが第一印象でした。
 「さらばエヴァ」というキャッチコピーに対してきちんと決着を付けていました。実際にエヴァのない世界になったし、比較的にハッピーエンドで終わりましたよね。その点は純粋に凄いと思いました。

 とはいえ終盤は精神的な世界観。
 これはTVシリーズでも、また旧劇でも見た内容を合体させたような。各キャラクターの過去や心理状態や願望が描かれ、ユイとの邂逅を描き、最後には巨大な綾波レイが登場するという。
 「またコレか」という唖然とした感じと、けどこれで最終的に決着するというのはある意味エヴァっぽいとも思いましたね。

 多分、「バトルだけでNERVを壊滅させて終了」とかもいいけど、それで完結しても微妙な感じになるんだろうな~と思うので、精神世界での決着はとても良かったと思います。



 それに、最後にシンジとゲンドウが直接に対峙する「父と子の対話」や、シンジがユイの存在を認識して包まれる「母と子の関係」などがしっかりと描かれていて、「親子や人の関係・心の問題」にフォーカスしていた『エヴァ』作品の最後としては、描くべき内容だったと思うし、そこに決着を付けたのは大事だったと思います。

 ここの部分はとても大きな評価をしたいと、個人的に思います。だって『エヴァ』の最初は「父親から電話で呼び出された息子」で始まるし、主人公は「父との関係に悩む息子」だし、結局は「全人類を巻き込んだ親子エゴ」なわけで、そこに着地点を設けられた意味は大きいのではないでしょうか。



 精神世界の話で終わらず、最後には現実世界で「エヴァの呪縛」から開放されたのか成長したシンジが描かれていたのが、完結作っぽいですね。

 とはいえ、あのラストで良いの?とも。
 マリが最終的にはメインヒロインみたいになっていたところ、う~ん…と。確かに格好良い女性だけど、彼女がシンジの相手として最後のスクリーンを飾るのはどうなのかな、と。



 とはいえ、きちんと決着したのは驚きです(笑)
 とても良い『エヴァンゲリオン』だったと思います。


 ということで、『シン・エヴァ』の感想でした。
 物語も面白かったし、アニメーション作品として最高だったし、これは本当に観てよかった映画でした!


 これは、来場者特典とパンフレットです。
 来場者特典は総作画監督:錦織敦史さんのアスカのイラストでした。しかも二つ折り冊子で、中身はなんと・・・映画を観終わって開くと超興奮!

 またパンフレットの方も大ボリューム。
 色々な資料とか見れたし、個人的にはエンドロールの内容が一覧できるのも嬉しいところ。一方で声優さんのインタビューが大半を占めていてちょっと物足りない感じ。もっと制作スタッフさんの声を聞きたかったです。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』来場者特典とパンフレット

読んでくださり、
ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!

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